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ダークマターさんは三次元になりたい #3

 カワイイ界の阿修羅界と言われるぺったんこタウンの中でも、「カワイイ・サグ」たちが大好きなせいで、とりわけ治安が悪いと噂のぺったんこ市場の中心部。そこに舞い降りた四次元からの転生者ダークマターさんは、無防備にも普通の観光客のようにあたりをキョロキョロと見回していた。

ダクマタ
ダクマタ

キョロキョロ

 そんなことをしていれば、大抵の人は「包丁を持った悪いやつらに遊びに誘われたり、山狩りへの参加を打診されたり、へんてこりんなプロジェクトに誘われてしまうかもしれない:;(∩´﹏`∩);:」と、怖気づいて膝がぶるぶると震えてしまう。けれどダークマターさんはそんなのお構いなし。無知って怖い!

ダクマタ
ダクマタ

あの神的なやつは――いないな

ダクマタ
ダクマタ

とすると、あいつはあの時空の狭間だけの存在か

ダクマタ
ダクマタ

ま、テンプレ通りだな

ダクマタ
ダクマタ

で、テンプレ進行なら、ここらでステータスがわかるはず

ダクマタ
ダクマタ

スキルポイントの振り分けとか、そういうのね

ダクマタ
ダクマタ

とはいえ、あのふにゃふにゃした神の手がけた転生だし、言わなきゃ出てこない不親切設計かもな

ダクマタ
ダクマタ

ステータス・オープン

ダクマタ
ダクマタ

……

ダクマタ
ダクマタ

出てこねぇな。必ず出てくる要素ではないからな

ダクマタ
ダクマタ

このまま最初のバトルか?

ダクマタ
ダクマタ

体がちょっと大きくなった程度の雑魚が出てきて――やばい! こいつ、でかいぞ! ……あ、でも倒せる

ダクマタ
ダクマタ

――的な感じでサクッと倒す。それを物陰から見ていた現地民イケメン。虫の息だ

ダクマタ
ダクマタ

命を助けてくれてありがとう😍 おらと結婚してくれ!

ダクマタ
ダクマタ

この時点ではイケメンとはいえ素朴なイケメンな

ダクマタ
ダクマタ

キョロキョロ

ダクマタ
ダクマタ

しかし、ここはどう見ても町の中だ

ダクマタ
ダクマタ

おかしい風体のやつはちらほら見かけるが、モンスターというほど野趣は感じられん

ダクマタ
ダクマタ

ふむ🤔

ダクマタ
ダクマタ

ステータスでもバトルでもないとすると、市中だし、ギルドかな?

ダクマタ
ダクマタ

ギルド、ギルド……

ダクマタ
ダクマタ

キョロキョロ

ダクマタ
ダクマタ

看板の字が全く読めない

ダクマタ
ダクマタ

異世界転生だし、しょうがないとはいえ

ダクマタ
ダクマタ

言語系のスキルは、オプションではなく標準サービスにしてほしいものだ

ダクマタ
ダクマタ

結構生死に直結するぞ

ダクマタ
ダクマタ

……

ダクマタ
ダクマタ

あー、もしかして、読めないけれど会話はできる?

ダクマタ
ダクマタ

だよねーさすがに、言語スキルは標準っしょ

ダクマタ
ダクマタ

会話ができないと冒険ははじまらないものね

ダクマタ
ダクマタ

よーし、ちょっくら道行く人を捕まえて、ギルドの行き方を聞いてみるか!

ダクマタ
ダクマタ

お、あの人はカッコいい髪型をしてるし、なんか知ってそうだな

ダクマタ
ダクマタ

すいません!

住民
住民

スタスタスタスタ

ダクマタ
ダクマタ

ちょっとお聞きしたいことが

ダクマタ
ダクマタ

……って、ひどくね?

ダクマタ
ダクマタ

まるで私が存在しないように素通りしていったわ

ダクマタ
ダクマタ

感じ悪……

ダクマタ
ダクマタ

ま、通行人はあいつだけじゃない。気を取り直して次、いってみるぞ!

ダクマタ
ダクマタ

すいませーん!

エムマニ
エムマニ

スススススッ

ダクマタ
ダクマタ

えええ(困惑)

ダクマタ
ダクマタ

なら、こっちの人だ!

ダクマタ
ダクマタ

あのー

あにじゃ
あにじゃ

タタタタタッ

ダクマタ
ダクマタ

道を教えていただきたいのですが

ニョッキ
ニョッキ

テクテクテクテク

もちとり
もちとり

アジトに帰ったらなにやる?

きなこ
きなこ

べつに、決めてないよ。兄さんは?

ダクマタ
ダクマタ

二人組、急いでいる風でもない。いけるかもだぞ!

ダクマタ
ダクマタ

すいませーん

ダクマタ
ダクマタ

この辺りにギルドってありますか?

もちとり
もちとり

帰ってもなんもないし、遊んでく?

ダクマタ
ダクマタ

あのぅ……おーい!

きなこ
きなこ

いいね! せっかくここまで来たんだし、転送増幅マシンを見に行こうよ!

ダクマタ
ダクマタ

💢

もちとり
もちとり

えええ、あの二回に一回は転送に失敗して二人になっちゃうっていう、あの装置?

ダクマタ
ダクマタ

おい、てめぇら、露骨に無視してんじゃねぇ

きなこ
きなこ

楽しそうじゃん🤣

ダクマタ
ダクマタ

こっち向きやがれ💢

ダクマタ
ダクマタ

スカッ

ダクマタ
ダクマタ

あれ、つかめない!?

ダクマタ
ダクマタ

スッ

もちとり
もちとり

ぷかぷかぷかぷか

ダクマタ
ダクマタ

スッ、スッ

きなこ
きなこ

フヨフヨフヨフヨ

ダクマタ
ダクマタ

えええ……(困惑)

 結局誰にも相手にされなかったダークマターさんは、ドブ川をたゆたう草臥れたぼろきれのように、ふらふらとぺったんこ公園に流れ着いた。そして、ベンチにしょんぼりと座り込む得体のしれない三次元キャラクター相手に、とりとめもなく愚痴をこぼすのであった。

ダクマタ
ダクマタ

信じられるか? 誰にも認識されないんだぜ?

てんし
てんし

……

 だが、相手は野良の三次元キャラクター。こちらの言葉を理解しているのか、そもそも存在を認識しているのかどうかすら、定かではなかった。およそ覇気のない猫背で、漠然と中空を見つめる。こちらの言葉にはピクリとも反応しない。

ダクマタ
ダクマタ

あの神の野郎のせいに違いないわ……くそ……雑な仕事をしやがって……

ダクマタ
ダクマタ

はぁ……こういうときにはやけ酒でもキメたい気分だけど、あいにくこの体はすべての物質を素通りしてしまう

ダクマタ
ダクマタ

この世界に、私の実体は存在しないってことらしい

ダクマタ
ダクマタ

……はぁ……ちくしょう……こんなはずじゃ

てんし
てんし

スッ

ダクマタ
ダクマタ

え? ビールの缶? お前、これ私にくれんの?

ダクマタ
ダクマタ

でも私、実体がないから受け取れないよ?

てんし
てんし

大丈夫。これは四次元ビールだから。いまのあなたにも飲める

ダクマタ
ダクマタ

そ、そう?

ダクマタ
ダクマタ

じゃあ、お言葉に甘えて

ダクマタ
ダクマタ

グビグビグビ

ダクマタ
ダクマタ

クゥウウウウ、染みるぜ🥹

ダクマタ
ダクマタ

てか、おまえ、喋れたんだな?

てんし
てんし

転生時の肉体生成ミスはわりとよくある

ダクマタ
ダクマタ

ん?

てんし
てんし

神さまにお願いしてもう一度肉体を作ってもらうか、自分で調達するか、どちらかしないといけないだろうね

てんし
てんし

スゥー……

ダクマタ
ダクマタ

いなくなっちゃった

ダクマタ
ダクマタ

グビグビグビ

ダクマタ
ダクマタ

ああ、ビールうめぇ……

 あの危険なぺったんこ市場のど真ん中に転生してしまったのにも関わらず、ダークマターさんが平気だったのは、実体を持っていなかったからなんだ!

 どうも、あの神の雑な仕事のせいで、肉体がもらえなかったみたい。ある意味おかげで助かったわけだけど、実体がないとせっかくの転生生活が送れないよ。どうしたらいいんだろう🤔

つづく
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