前回までのあらすじ
魔王は最近、自分の評判がうなぎ上りであることに危機感を抱いていた。なにかしら悪事を働いて「悪い人」だという評判を得たいところだが、「たまごサンドにからしを大量に仕込む」といったごく簡単な悪事すら満足にできない。
そこで、悪事アドバイザーとして雇われたきなこが、魔王のためにとっておきの作戦を考えてくれたみたいだけど、いったいどんな作戦だろうね?
魔王たちはいったんおうちに戻って、改めてサンドイッチを作った。今度のやつは大量のからし入りじゃなくて、普通においしいサンドイッチだ。たまごはもちろん、お野菜もふんだんに使って彩りにも気を配っている。
しかも、魔王が作った肉厚のローストビーフがたっぷり入っていて、なんとも肉々しい仕上がりだ。口直しのオレンジまでついているよ。

まっとうに王道に美味しそう!

お店クオリティだ!

悪事のために公園に放置するなんてもったい:;(∩´﹏`∩);:

そこは、心を鬼にして放置してくるんだよ:;(∩´﹏`∩);:

あとで二人にも作ってあげるからね!

え、ほんとに🥹?

ありがとう!

でも、待って

そんなマインドセットじゃ、いつまで経っても悪い評判は得られないよ?

「おまえらは、においをかがせてもらっただけでありがたく思え、愚民ども!」

くらいの気持ちでいないと、魔王の望む凶悪な魔王像には近づけないのでは?

まあ、そこは俺に任せろって

次はどうすればいいのかな?

さっきと同じく、サンドイッチを公園に放置するんだけど、今回はちょっと場所を工夫しようかと思っている

二人とも、どんなにきわどい展開になろうが、文句を言わずに俺についてこいよ?

きわどさの程度によるな💦

ジーッ(◉_◉)

俺は、どこまでもついてくよ♡

魔王ってば、やさしい……!
三人が向かったのは、ぺったんこ小学校の近所の小さな公園だ。多少の遊具はあるものの、壊れていたり、ボコボコにされていたりして、なんとも荒れた雰囲気だ。
そのせいか人気もなくて、高めの鉄棒で懸垂をしている筋トレガチ勢の人が一人いるだけだった。

キョロキョロ

今回も、拾い食いを狙う作戦なんだよね?

そうだよ

ここは、ぺったんこ公園ほど利用者もいないみたいだし

あそこにいる筋トレガチ勢の人は、日ごろから食事をコントロールしてそうだから

天変地異が起きても拾い食いなんてしなさそうだし

さすがに場所の選定がまずいんじゃないかな

もうすぐ小学校の下校の時間なんだ

だから、そのうちキッズたちがここに集まってくる

まさか、年端もいかない子供を狙おうっていう作戦!?

それはさすがにまずいでしょ💦

その程度のことで怯んでちゃ、いつまで経っても悪事はできないぜ

それにしたって、世の中には踏み越えちゃいけないラインっていうものがあるんだよ

あ、キッズたちがやってきたみたいだぜ?

あそこのすべり台の近くのベンチにサンドイッチを置いて、さっさと隠れよう

わかった♡

警察沙汰になったら、ぼたもちさんは他人のふりをするからね……!?
三人がさっと隠れたのとほぼ同時に、キッズたちが思い思いの獲物を持って公園に侵入してきた。

ヒャッハー!

学校という名のジェイルをブレイクした俺たちは自由だぜ!

僕は大きくなったら、神になりたい🥹!

なんか来た……!
傍若無人な無法キッズたちが公園の遊具を壊してまわる。
ルールなんかくそくらえ、持続可能な遊具の使い方なんて知ったことじゃない、俺らが楽しければそれで良いんだよという、暗黒アウトローの精神だ!

ゲシゲシゲシ

ドゥクシドゥクシッ

オォオォォオオオオオ
唯一、彼らに正しい遊具の使い方を教えられそうな存在であった筋トレガチ勢の人の姿はすでになく、公園は末法の世の様相を呈している。
そんななか無邪気にもおいしそうな匂いを漂わせているサンドイッチは、まさにやつらの格好の標的であり、見つかるのも時間の問題だった。

!

どうした?

くんくん

楽園の気配がする!

くんくん

あ、ほんとだ!

おいしそうな、サンドイッチのにおいがする!

くんくん

このにおいは、俺の大好物のたまごとローストビーフとオレンジのにおいだ!

あそこのベンチにランチボックスが置いてあるよ

あれこそ、俺らの探し求めた楽園にちがいない
野性味の強い無法キッズたちは、本能にものを言わせて、あっと言う間にサンドイッチを見つけちゃったみたいだ。しかしながら今回のサンドイッチは、からしも適量しか入っていない普通においしいサンドイッチだ。
このままだと魔王はキッズに無償でサンドイッチを振舞うことになり、悪事カウントできるかどうか微妙なことになってしまう。作戦を考案したきなこは、どう落とし前をつけるつもりなんだろうね:;(∩´﹏`∩);: